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2016年8月2日

インバウンド大国フランスに学ぶ! フランスと日本の観光集客システムの違いとは?[第3回]

これまで「インバウンド大国フランスに学ぶ!」では、フランスで取り入れられているWeb集客の工夫、多言語対応、観光客の文化的背景を考慮して提供する接客サービスなどの事例を紹介してきました。最終回の今回は、少し俯瞰をして、世界の国々と比較した場合のフランスの観光業の位置づけに触れます。そして、フランスが国を挙げて取り組む観光施策の一例を紹介しながら、観光集客システムについてのヒントを探りたいと思います。

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実はフランスは、国際観光収入では世界4位

第1回でも述べたとおり、フランスは国際観光客到着数(海外からの観光客数)が30年連続世界一の観光大国ではありますが、観光による収益についても世界一・・・というわけではないようです。

2015年に国連世界観光機関(以下、UNWTO)が公表した報告書 「Tourism Highlights 2015 Edition」によると、国際観光収入(旅行先の国・地域が海外旅行客から得る収益)の国別トップ4は、1位アメリカ、2位スペイン、3位中国、そして、4位がフランスという順位になっています。

 

国際観光客到着数(2014年時点)

国際観光客到着数

(出典:Tourism Highlights 2015 Edition. UNWTO)

 

国際観光収入 (2014年時点)

国際観光収入-1

(出典:Tourism Highlights 2015 Edition. UNWTO)

 

国際観光客到着数については、フランスとアメリカでそこまで大差はないものの、国際観光収入でアメリカがフランスの約3倍の収益をあげているという結果になっています。

 

スペインがフランスよりも上位にランクインしている理由として考えられるのは、スペイン(特に南スペイン)がヨーロッパ人にとって人気のリゾート地であることが一つ挙げられます。夏季休暇を利用して訪れるヨーロッパからの観光客が多く、長期滞在型に適した観光先となっていることがスペインとフランスの観光地としての大きな違いのようです。

 

ちなみに、日本の国際観光収入は?

2014年の国際観光収入についての結果をみると、アメリカは177,240 百万ドル、フランスは55,402百万ドル、日本は18,853百万ドルです。

 

日本の国際観光収入はアメリカの約10%、フランスの34%とその差は大きいものの、2010年比の日本の国際観光収入の伸び率は約43%も上昇しているという前向きな結果が出ています。(なお、同年比のフランスの伸び率は17%)

 

国を挙げて取り組むフランスの観光業支援

上記の国際観光客到着数と国際観光収入が示すように、フランスは「世界中から多くの観光客を引き寄せる国」ではあるものの、その経済的収益の観点では、世界一というには厳しい状況のようです。

 

しかし、フランスにとって観光業はGDPの約7%を占める主軸産業。その観光業の更なる発展と改善に取り組むべく、2015年6月に40項目もの改新提案がまとめられました。その中には、以下のような措置が含まれています。

 

  • 中国人やロシア人などビザが必要な国籍の人へ48時間以内の発給
  • セキュリティの向上
  • 免税手続き(デタックス)の簡素化とショッピングの奨励
  • シャルル・ド・ゴール空港とパリ間の特急設置
  • 地方都市空港の増航、タクシー・バスレーンの設置
  • タクシー料金の定額化             など

 

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パリ市内のバスレーン

とりわけ、中国人観光客に対するビザ発給を加速する措置については、2014年に決定され、同年中に早速実施されています。2014年に中国人観光客に発給された同年のビザ件数は対前年比61%増となり、その有効性については、ローラン・ファビウス元仏外務・国際開発大臣が当時声明で発表しています。

また、タクシー料金の定額化については、2016年3月に実施され、タクシーが外国人旅行者にとってより使いやすい存在となりました。

 

 

このように、政府がインバウンドのための更なる環境整備のイニシアティブをとるものの、スピーディに具体的なアクションに移していく実行力は、日本でも見習うべき点と言えるでしょう。

 

地方の観光業育成は、観光立国への鍵

国内観光振興の鍵として、日本と同じくフランスでも重要視されていることは、地方観光業の育成です。特に、フランスでは観光客を地方へ積極的に足を運んでもらうための交通整備を強化しているようです。

 

例えば、パリでは、地方都市空港の増航を提案し、国際空港から地方都市に乗り継ぎで行けるように地方への活性化を図っています。現在すでに、パリ、シャルル・ド・ゴール国際空港からはTGV(日本でいう新幹線)が各地方都市に出ているため、パリにわざわざ経由しなくてもそのまま地方都市に向かうことも可能です。

 

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パリ郊外ノルマンディー地方のジョヴェルニー村。印象派絵画の巨匠クロード・モネが晩年を過ごした家(写真)には4月~10月の一般公開の間多くの人が訪れる。

 

 

また、日本人に不動の人気のモンサンミッシェルへもバスでなく、鉄道(最寄り駅からはバス)で行けるようにしたり、地方都市のイベント(カンヌ映画祭、モナコグランプリ、ニースの祭り、アルザス地方のクリスマスマルシェ等)を増やし活性化を図るなど、パリだけでなく地方の魅力も気軽に楽しめる仕組みとなっています。

 

日本でも、観光庁により観光立国に向けたアクション・プログラム2015が取りまとめられました。その中でも交通環境整備はもちろんのことながら、地方創生への貢献は重要課題として挙げられています。具体的には、「世界に通用する魅力的な観光地域づくり」のための広域観光周遊ルートの形成・発信、道の駅を核とした地域における観光振興など地域資源の磨き上げの強化を掲げています。

 

しかしながら、こうした地域の観光振興の実現には、地元地域に関する知識を持ち、日頃から地域住民と接する機会の多い各地方自治体との連携が必要不可欠です。今後は、国・地方自治体・企業を巻き込んだ産官民協働での観光産業の改善と育成を推進していくことが、フランス・日本ともに一層求められていくのではないでしょうか。

 

まとめ

「インバウンド大国フランスに学ぶ!」シリーズ、いかがでしたでしょうか。文化遺産、美しい景観など既存の観光資源のみに依存することなく、観光客に見合ったマーケティングや接客サービス、利便性を考慮した環境整備の改善などに国をあげて取り組み続ける体制が、フランスが世界中からの観光客を引き寄せる理由の一つなのかもしれません。

 

2020年までに訪日外国人観光客4000万人を目標に掲げる日本にとって、今後もインバウンド大国フランスの精力的なアプローチから目が離せません。

 

出典:

・      UNWTO Tourism Highlights 2015 Edition. World Tourism Organization,

http://www.e-unwto.org/doi/pdf/10.18111/9789284417414  (参照:2016-8-1)

・      インバウンド大国フランスの実情. 一般財団法人 自治体国際化協会,

www.clair.or.jp/j/forum/c_mailmagazine/20150929/126-1.pdf (参照:2016-8-1)

・      RAPPORT CONSEIL DE PROMOTION DU TOURISME LE 11 JUIN 2015 20 SUR 20 EN 2020 40 MESURES POUR RELEVER LE DÉFI

http://www.diplomatie.gouv.fr/fr/IMG/pdf/Rapport-CPT-General_cle8c6384-1.pdf  (参照:2016-8-1)

・      フランスの国際観光統計に関するローラン・ファビウス外務・国際開発大臣の声明 [fr].在日フランス大使館. 2015年4月7日,

http://www.ambafrance-jp.org/article8746 (参照:2016-8-1)

・      観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2015. 観光立国推進閣僚会議. 平成27年6月,

http://www.mlit.go.jp/common/001092004.pdf (参照:2016-8-1)

 

 

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